流行性耳下腺炎は、「おたふく風邪」とも呼ばれています。

咳やくしゃみに含まれるムンプスウイルスを吸い込んだり(飛沫感染)、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることで感染(接触感染)します。

その一方で、接触しても症状が現れない方(不顕性感染)も約3割程みられています。

おたふく風邪は流行があるため、周囲の流行の状況を確認しておきましょう。

症状は?

2~3週間の潜伏期間(平均18日前後)を経て、耳下腺の腫れ・飲み込んだ時の痛み・押した時の痛み・発熱を主症状として発症し、通常1~2週間で軽快します。

唾液腺腫脹は両側、あるいは片側の耳下腺にみられることがほとんどですが、顎下腺・舌下腺にも起こることがあります。

 

成人では、小児と比べて体内に入ってきたウイルスを排除しようとする抵抗力(免疫)が強く反応するため、高熱が持続し小児より炎症がひどくなったり、重症化や合併症の確率が少なくないです。

合併症は?

最も多い合併症は髄膜炎です。その他、髄膜脳炎・睾丸炎・卵巣炎・難聴・膵炎などを認める場合があります。

無菌性髄膜炎は、流行性耳下腺炎の症状が明らかな例のうち約10%に出現すると推定されています。症状が4~5日経過しても改善せず、頭痛・嘔吐がみられたら要注意です。

また、約0.2%の割合で「髄膜脳炎』へ発展することもあります。髄膜炎の症状に加えて、意識障害やけいれんなどがある場合は脳炎の可能性が高いです。

稀ですが、「膵炎」も合併症で起こる可能性があります。激しい腹痛・嘔吐などがありショック状態となります。症状が悪化すると腹膜炎を起こす可能性もあります。

これらの合併症は、命に関わる危険性がありますので、速やかに救急外来を受診しましょう

 

思春期以降では、男性で約20~30%に睾丸炎・女性では約7%に卵巣炎を合併するとされています。

男性の睾丸炎では、発熱・陰嚢部の腫れ・うずくまるような痛みが出ます。片方だけということが多いようですが、両方ともに発症し睾丸に大きなダメージが起きてしまった場合は「無精子症」といわれる不妊症の原因となってしまいます。

女性の卵巣炎では、不妊になることはあまり無いようですが、激しい腹痛の症状があった場合は受診をしましょう。

また、稀ですが20000人に1人程度に難聴を合併すると言われており、永続的な障害となるので重要な合併症の一つです。

治療は?

流行性耳下腺炎とその合併症の治療は、基本的には対症療法になります。

予防は?

効果的に予防するには、ワクチンが唯一の方法です。

任意のワクチンで自費になりますが、1~2歳に1回・5歳前後に1回の合計2回のワクチン接種が推奨されています。

成人でも、早目にワクチンを1回接種することにより予防が可能です。

当院でもワクチン接種は可能です。まだ罹患されていない方はお気軽にお問い合わせください。

反復性耳下腺炎って?

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)と、症状がそっくりな病気です。

両方とも耳下腺が腫れるという面からは同じであるため、耳下腺だけが腫れている場合は区別はできません。

反復性耳下腺炎の原因は、まだはっきりと分かっていません。耳下腺の腫れを何度も繰り返し起こすことがあります。また、両方が腫れることが少なくほとんどが片方だけ腫れます。発熱することはまれで、痛みも軽いことが多く2〜3日で改善してきます。

流行性耳下腺炎と違って感染することはありませんが、流行性耳下腺炎との判別が難しいので確定診断が出るまでは、流行性耳下腺炎という考えで対処する必要があります。

他にも、虫歯などが原因で起こる炎症性の腫れがあります。

診断がはっきりとしない時は抗体検査で明らかにすることが出来ます。

お気軽にお問い合わせ下さい。